guida

-------------------------------------------------------------------------------- 「・・・・。」 擦れ違う生徒達とは裏腹に、スコールとは互いに喋ることなく沈黙を保ち続けていた。 普段から寡黙なスコールにとってはこんな状況は日常茶飯事であるが、 社交的なが沈黙を保つのは珍しい事だ。 「不安か?」 唐突にスコールが尋ねた。 「え?」 「課題の事だ。」 スコールは少し説明不足だったと判断し、そう付けたす。 はあぁ、と納得すると苦笑を浮かべる。 「ちょっとね・・課題の事もだし、これからの事もね。」 切なそうな表情を浮かべるの腕をスコールは無意識のうちに掴んでいた。 「どうしたの?」 「いや、なんでもない。」 そう言って彼女の腕を放す。 どうしてだろうか、急にが目の前からいなくなってしまうような感覚を覚えた。 ――どこに行っちゃたの?――お姉ちゃん! 急に脳裏に言葉が思い浮かび、痛みが走る。 「ッ。」 「大丈夫ッ?」 「あぁ。」 「無理しないでね。」 「分かってる。」 それでもまだ心配そうな顔をしているに、行くぞと促す。 慌ててもその後に続いた。 † † † スコール達は案内板のある広いホールまで来ていた。 そこには、少しイラついた表情のスコールと見知らぬ少女と楽しそうに話すの姿が見られた。 ――数分前のことである。 「ち、こ、く〜〜〜!!」」 「ん?」 廊下に誰かの高い声が鳴り響いた。 何だろうと、思っていると角から見知らぬ少女が現れた。 「あ、」 短く声を上げて、スコールの方を見るが手遅れだった。 少女とスコールは真正面で激突した。 少女は反動で尻餅を付いてしまう。 は打ち所が悪かったのか、眉を顰める少女に手を差し伸べて声を掛ける。 「ありがと!」 少女はの手を取って立ち上がると、人懐こい笑みを向ける。 「ごめんねー、急いでたから・・・あ、ねぇねぇもしかして其処のクラスの人?」 クリクリの大きな瞳と顔を傾げると揺れ動く外はねの栗色の毛。 「(可愛いなぁ・・。)うん、そうだよ。」 そう返事をすれば、少女は肩を降ろして「ガーン!ショックぅ・・・うう。」と声を上げる。 そして、「だって此処前のガーデンより広いんだもん・・」と呟く。 その言葉には、何か思い出したようだ。 ――きっと、トラビアからSeeD試験の為に編入して来た子だな。 「ねぇ、もしかしてトラビアからの編入して来たの?」 「うん、そうだよー。さっき転向して来たばっかりなんだ。あ、よかったら此処のガーデン案内してくれないかな?」 先程まで落ち込んでいた表情はコロリと人懐っこそうな笑みに変えられた。 「そんな暇「うん、いいよー!」 これ以上時間を取られたくないとすかさずスコールは断ろうとするが、の声によって遮られてしまった。 「お前、課題は?」 言葉を遮られて少し不満そうなスコール。 そんなスコールを宥めるように「案内板で説明するからさぁ。それに・・」 はふわりと笑って「お兄ちゃんがいるから、課題なんてすぐ終わるよ!」と言った。 「・・・はぁ、さっさとしろ。」 「うん、ありがとっ。」 は少女に向かって、予定があるから案内板で手短に説明することになると告げた。 すると少女は全然構わないよ、と笑い返してくれた。 そして、スコールの方を向いて「君もごめんね?用事あったんだよね?」と申し訳なさそうに謝る。 スコールは構わないとだけ告げると、エレベーターのスイッチを押した。 エレベーターに入ってスコールは1階のボタンを押す。 その際は、1階に案内板がある事を告げる。 「そうえば、見たかもー。あ、そういえば二人の関係って恋「兄妹だ。」 「え!?そうなの!?てっきり・・恋「兄妹だ。」 「うん、そうなの。似てないから分かんないよねー。」 頑なに言わせないスコールに苦笑しつつも、は彼の言葉に説明を付けたす。 そしてエレベーターで1階に降りた三人はさっそく案内板の前に来た。 ――そして今に至る。 「これが案内板だよ。じゃあ、さっそく説明します!」 「はーい!」 元気よく返事を返してくれる少女には笑いながら、 案内板の上部・・・つまり、北にあたる部分を指す。 「ここは寮だよ。殆どの人は外から通わずにここに住んでるの!」 「そうなんだー。」 「うん、それで・・・。」 は次々に案内板を使って説明していく。 少女もの指を目で追いながら、熱心に話を聞いている。 「(まだか。)」 なかなか進まない説明にイライラしつつも、を置いて行く訳にもいかずスコールはただただ待つしかなかった。 スコールは自分が妹にどれだけ甘いかを痛感する。 「で、ここが校庭!」 「あ、ここで学園祭やるんだよね!」 「うん、そうだよ。よく知ってるね!」 「実行委員になるつもりなの!よかったら、一緒にやらない?」 「あ、いいね!暇があったら、やりたいな。」 「うん!その時はよろしく!」 「で、こっちが保健室だよ。ケガとかしたら行く所ね。 因みに保健室に100回お世話になると、保険医のカドワキ先生から記念救急箱セットがもらえるよ!」 「へぇ、そんなに行く人いるの?」 「い、いるんじゃない?(お兄ちゃんとか、サイファーとか)あ、後は・・」 身近にそれらしき人達がいるあかりは居ないと言い切れずにいた。 「・・で、最後は3階!ここにはシド学園がいる学園長室だよ。無断入室厳禁だから、気をつけてね!」 「了解!」 「よろしい!これくらいかな。」 は長い間喋っていて疲れたのか小さく息を吐いた。 セルフィは案内板で再度の説明を確認すると、ありがとうとお礼を述べた。 「いいよ。それじゃあ、またね!」 そう言って、スコールの元へ戻ろうとしたが、少女に引きとめられた。 「そういえばまだ自己紹介してなかったね!私はセルフィ・ティルミット!セルフィでいいよ。」 「セルフィね、私は・レオンハートだよ。で、お兄ちゃんがスコールね。」 スコールに視線を向けながらは言った。 「とスコールだね!」 セルフィは二人の顔を見て頷いた。 「うん!よろしくね。じゃあ、私達課題受けに行かなきゃ。」 「そうなの?引きとめちゃってごめんね!がんばってね。」 「ううん、いいよ。それじゃあまたね。」 そう言ってセルフィに手を振るとは今度こそスコールの元に向かった。 「ごめんね、思った以上に長くなっちゃって・・。」 申し訳なさそうに眉を下げるにスコールは責め立てる事が出来ず、否、と返した。 他人から見たら不機嫌そうに見えるこの仕草だが、長年一緒にいるにはしっかりと彼の真意が伝わった。 「ありがとね、それじゃ行こう。」 走り出したの後にスコールも続いた。 † † † ゲートを潜って、すぐに金髪の後ろ姿が見えた。 「先生!」 そう呼びかければ、金髪の女性―キスティスも振り返って笑みを零す。 「遅くなってすみません。」 頭を下げるにキスティスは「気にしないで。」と言って、今度はスコールに視線を向ける。 「・・・・・。」 「何かあったの?」 分かりにくいスコールの表情を見抜き、不機嫌そうな彼に声を掛ける。 スコールは更に眉間に皺を寄せた。 そんなスコールを見ては慌ててスコールの代理で応える。 「私のせいで遅刻しちゃったから・・」 サイファーに絡まれたと予想していたキスティスは意外な返答に驚きを隠せない。 「のせいで?何かあったの?」 「転校生にガーデンの案内をしてたんです。それで、思った以上に時間が掛っちゃって・・。」 キスティスは思い当るところがあるらしく、あぁと呟いた。 「トラビアからの子ね。こっちに来たばかりで大変そうだから、仲良くしてあげて頂戴ね。」 「はい!」 は笑顔で答える。 スコールは相変わらず無表情だ。 キスティスはいつもの事だと思い、然程気にも留めずに「それじゃあ、行くわよ。場所は大丈夫かしら?」 と尋ねる。 「大丈夫!ね、お兄ちゃん?」 「あぁ、ガーデンの東、だろ。」 「問題無いようね、じゃあ行くわよ。」 満足そうに頷いて、キスティスはそう言った。 その声を合図に炎の洞窟へと向かう。 はふと、自分の前を歩くスコールを見た。 さっき、自分がキスティスの質問に彼の代わりに答えなかったら、スコールはなんて言ったのだろう。 いつものように”別に”と返すのだろうか。 ――お兄ちゃんは思ってる事の半分以上を人に伝えようとしないんだよね。 まるで、理解なんて求めてないかの様に・・。ちょっとだけ、寂しいな。 「どうした?」 の視線に気付いたスコールが振り返る。 「え、ううん何でもない!」 慌てて視線を逸らすにスコールは疑問に思いつつも、再び先を見つめる。 はスコールの背中を再び見つめる。、 ――いつか・・・お兄ちゃんが・・誰か一人でもいいから、全てを伝えられる・・ そんな人に出会えますように・・・。 その願いとは裏腹に、それが自分である事を密かに願ってしまう自分がいた。