Io voglio prendere su con lui

-------------------------------------------------------------------------------- 暫くして三人は炎の洞窟に着いた。 途中二、三匹の魔物に遭遇したが予想以上にスムーズに行けたとは思った。 ガーデンの教師が洞窟の前に立っている。 (いよいよだなー、頑張らなくちゃ) とスコールは共に教師の前に立つ。 「課題、ローレベルG.F.取得。サポートはSeeD資格を持つ者。用意はいいな?」 マニュアル通り喋るガーデンの教師がレオンハート兄妹に問う。 「「よろしくお願いします。」」 敬礼とともに声を揃える。 「私がサポートします。教員NO.14キスティス・トゥリープです。」 キスティスが前に出て言った。 教師は頷くと、「制限時間を選びなさい」と言った。 「(10分、20分、30分、40分かぁ・・。どうしよう。)」 が迷っていると、「自分の能力に合った選択をしろ。怠けもせず、無理もせず・・・・だ。」 教師が釘を刺す。 は、一度スコールを見た。 「(お兄ちゃんもいるし・・・大丈夫だよね。)20分でお願いします。」 「よろしい、では行きなさい。」 そう言って、ストップウォッチのボタンを押す。 間を開けずに洞窟に入って行くスコールにとキスティスも続いた。 † † † 「(熱い・・。) 炎の洞窟と言われるだけあって、中は外と比べ物にならない程暑い。 「うゎ、溶岩流れてるし・・。」ポツリと呟く。 どこを見渡しても蜃気楼に覆われ、意識が朦朧としてしまいそうになるのを気合いで踏ん張りながら、足を進める。 「(魔物に遭遇してないのは、不幸中の幸いってトコだなぁ。)」 がそう思ってると、前方に赤い玉が浮遊しているのが見えた。 「(噂をすればなんとやら・・。)来ましたね・・。」 そう言って、腰に装備してあった武器――シュヴェルツェを構える。 「私がサポートするのはバトルだけ。この中での行動は貴方達がリードする事。」 鞭を構えながらキスティスが言った。 「了解。」 スコールは、そう言いながらガンブレードを構える。 現れたのは先程が見たボムに加えて、レッドマウスが現れた。 ボムは赤い玉に口や目と言ったパーツが付いた炎の塊の様な魔物、 レッドマウスは体の大部分が口で羽が生えたコウモリの様な魔物である。 「(ボムは魔法・・・特に冷気に弱い。あと自爆してくるんだよね、コイツ・・。)」 は授業で学んだ事を思い出す。 「(レッドマウスは吸血と超音波、2種類の特殊技を使う。風と聖に弱いが・・・物理攻撃でも十分だな。)」 スコールもまた相手の特徴や弱点から作戦を考える。 「(ブリザドならたくさんストックしてある。 ボムは魔法で私が、お兄ちゃんと先生にはレッドマウスを・・よし、これでいこう!)」 「(おそらくの方が俺よりも魔法のストックが多い。ボムはに任せて、俺はレッドマウスを倒すか。)」 「お兄ちゃん!」「レッドマウスだろ?了解だ。」 皆まで言わなくても分かる、と主張するようにスコールがの言葉を遮る。 「うん!先生もお願いします。」 「わかったわ。」 そう言いながらも、キスティスは二人の絶妙なタイミングの良さに内心驚いた。 「(いくら兄妹だからと言っても、ここまで息が合っているのは感心ね。)」 キスティスはそう思いながらも、目の前にいるレッドマウスに鞭を振るう。 レッドマウスが痛みのあまり叫んでいるがお構いなしにスコールがガンブレードを容赦なく振りかざした。 レッドマウスは奇声をあげて地面に沈んでいった。 一方、ボムを相手にしていたの方もあらかじめストックしておいたブリザドを放ち、難なく倒していた。 スコールはそれを確認したのち、ガンブレードを仕舞って「行くぞ」とだけ声を掛け、足を進めた。 「私と此処に来ると、何時もの実力を出せない生徒が多いのよね。」 ふと、キスティスが言った。 「(なんでだろ?)」「(くだらない。)」 それぞれの感想を知ってか知らずか、キスティスは続ける。 「私の魅力ってやつかしら?」 「え・・・。」「(なんて教師だ・・。)」 反応に困ると、呆れるスコール。 そんな二人の態度に気付いたキスティスは笑いながら、「いやね、冗談よ!」と言った。 「リラックスしてもらおうと思ったの。」と続けるキスティス。 そんな彼女には綺麗だと感じた。 「(先生って外見も綺麗だし、性格も大人っぽくて・・でもちゃんと可愛らしさもあるよな。)」 自分と同世代とは思えない。 は全てにおいて彼女に劣っているんじゃないか、と自己嫌悪の念に包まれた。 † † † その後も何匹かの魔物に遭遇したが、ここでの戦闘にも慣れてきたスコール達にとっては特に苦にもならず、 あっという間に洞窟の最深部へと着くことが出来た。 「ここが最深部よ。二人とも気を抜かないようにね。」 キスティスがそう言った。 「あぁ。」「はい。」 高まる緊張感・・いよいよ課題の山場にさしかかる。 慎重に足を進めれば、道が広がっていきやがて広い空間に着いた。 「(どこにいるの?)」 が辺りに目を配っていると突如、目の前のマグマから何かが飛び出してきた。 急に現れた何かに三人は各々武器を構える。 ――ドゴォォォォンッ 大きな音を立てて降り立ったのは、大きな角に獣の顔の巨体―――イフリートだった。 「(イフリートかぁ・・・まぁ、炎の洞窟だもんね。とりあえず、ここはシヴァを召喚しなきゃ。)」 イフリートは冷気に弱いG.Fだ。 ブリザドで攻めてもいいが、手っとり早く体力を消耗させるにはシヴァのが適役だと考えたのだ。 は、目を閉じて意識を集中させる。 スコールはをチラリと見る。 「(シヴァを召喚する気か・・。)」 G.F.を召喚するには時間がかかる上に、召喚者は意識を集中させる為に無防備な状態になる。 スコールはイフリートの注意がなるべくこちらにくるように仕向ける。 キスティスもスコールの意図を汲み取り、イフリートに鞭を振るう。 「お兄ちゃん、先生!」 が二人に下がる様に言った。 二人が一歩退くと同時にはシュヴェルツェの刀身をそっとなぞる。 「(頼んだよ、シヴァ!!)」 熱気に包まれていた洞窟内が今度は冷気に包まれる。 の足元から氷が広がる。 そして、彼女の目の前に氷柱が建ったと思うと、一気にそれが砕け中にいた色白の美女――シヴァが目覚める。 彼女はイフリートの方に両手を向けたかと思うと、そこから冷気を放つ。 ダイヤモンドダストを真正面から喰らったイフリートはもがき苦しむ。 スコールが間を一秒と開けずにガンブレードを振りかざしそのままトリガーを引いた。 イフリートはの方に視線を向けると ――こやつ・・イヴァを従えているのか!? 忌々しそうにを見つめ、丸太の様な腕をを向けファイアを放った。 「ッ!!」 はバックステップで避けてみせるが、そちらを意識しすぎで襲いかかるイフリートの腕に気付けなかった。 「っ!!」 スコールが叫んだ。 はそのまま岩壁に叩きつけられた。 咄嗟に受身の態勢を取ったのでダメージは軽減できたが、打ち所が悪くすぐに態勢を立て直せない。 「先生はの回復を。後は俺がやる。」 スコールはそう言い放ち、イフリートに飛び掛かった。 そしてガンブレードを振り降ろす、もちろんそれだけでイフリート倒せるとは思っていない。 すかさずイフリートの頭部に向かってブリザドを放った。 ――イフリートはそのまま地に伏し戦いは終った。 「ありがとうございます。」 ケアルを掛けてくれたキスティスには笑いかける。 その笑顔は何処と無くぎこちない。 「どうしたの?」キスティスはそんなに首を傾げた。 「・・・またお兄ちゃんの足引っ張っちゃったな、って。」 「そんなことないわよ、の判断力はすばらしかったわ。」 キスティスが笑いかける。 ――せっかく訓練したのに、先へ先へとわき目も振らずに進んでいく兄に・・必死に追いつこうとしてた。 「でも、もう見失っちゃった。」ポツリと呟く。 「・・。」 寂しそうな表情のにキスティスは戸惑った。 いつも笑っているの意外な一面にキスティスは何と言葉を掛けてよいのか分からなかった。 「(教師失格ね。)」キスティスがそう思っていると、背後から気配がした。 イフリートを倒したスコールが戻ってきたのだ。 スコールはの前で立ち止まる。 「お兄ちゃん・・。」目の前に立つスコールを見上げる。 「シヴァがいなかったら、20分で終わらなかった。」 「ぁ・・。」 呆然とするにスコールは時間が無いと言って、そのまま出口に向かった。 とキスティスも慌てて追いかける。 熱い洞窟内を駆け抜ける中、ふと、がキスティスに言った。 「あれはお兄ちゃんなりの慰めなんですよ。」 「随分遠回しね。まぁ、スコールらしいけど。」 「ふふ、ですね。」 そう言って、先を走るスコールを見た。 まだ、見失ってない。そう思うとなんだか胸が暖かくなった。