※ストーリーの都合上、ヒロインが今回出てきません;
sogno
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「何でこんな事になっちまったんだよ!」
隣で走っているゼルが騒いでいる。
スコールは自分より数mを走るサイファー見た。
・・全ての始まりはサイファーの一言だった。
「おい、あそこに行くぞ。」
本来なら、言い渡された任務通り中央広場で敵を一掃し、その場で待機する予定だった。
が、不運にも偶然山頂の建物に向かっていくガルバディア軍兵士達を見つけてしまった。
彼は沸き起こる衝動を抑えきれず「違反命令だ!」と拒むゼルとスコールを班長の権限により強制同行させた。
スコールは人知れず溜め息を吐く。
その時――
脇の茂みから一人の男が這い蹲って出てきた。
「(どこから出てきたんだ・・。)」
スコールがそんなことを思っていると、男がこちらに気が付いたようだった。
「うわぁっ!!あんた達はっ!?」
どうやら彼は敵だと思ったらしく、その表情は怯えていた。
「俺達はガーデンから派遣されてきたSeeD候補生だ。」
スコールがそう答えれば、男は安心した様だ。
「山頂の様子はどうなっている。」
サイファーが山頂ある施設を見つめながら尋ねる。
「山頂?あぁ・・っ電波塔か。今、ガルバディアの兵士が・・・入り込んでい、る。」
「(あの施設は電波塔だったのか・・。)」
男は苦しそうに呼吸をしながら続ける。
「はぁッ、そもそもっあそこは魔物の巣窟だ・・・あんた達も行くなら気をつけて・・・・うわぁ!?」
「!!」
急に茂みから魔物の鳴き声が聞こえた。
そして次の瞬間、男はその魔物によって穴に引きずり込まれたのだった。
慌ててスコールが男を引きずり出そうとするが遅かった。
男は断末魔を上げると、やがて息絶えた。
「チッ、モンスターか・・!」
茂みの中から姿を現したのは、蛇に似た魔物――ヘッジヴァイパーだった。
3人は各々の武器を構えて戦闘態勢をとる。
ヘッジヴァイパーは何度か体をうねらしたかと思うと、そのまま尾を振り下ろす。
ゼルは軽いフットワークでそれを避けるとそのまま魔物に向かって突っ込んで行く。
「気を付けろ!ソイツ毒を吐く気だ!」
「ッ!!」
サイファーが言った直後、毒霧が辺りに撒き散らされた。
慌てて三人が口と鼻を覆う。
だが、微量ながら入ってしまった毒霧の所為で、スコール達の目の前が霞む。
「うぉっ!?」
ゼルが怯んだ隙を見て、ヘッジヴァイパーが鋭い歯を剥きだして襲いかかる。
「チキン野郎が・・ッ!」
サイファーが横からヘッジヴァイパーをガンブレードで斬りつけた。
しかし、かなりの硬度を誇るヘッジヴァイパーの肌には致命傷と言える傷を与えられなかった。
「(・・・ヘッジヴァイパーの弱点は冷気か。)」
が居ればシヴァを召喚してもらえば良いのだが生憎、彼女は別の班だ。
「(仕方ないな・・)ゼル、サイファー!」
スコールの意図を汲み取り、2人がヘッジヴァイパーから距離を取った。
その瞬間、スコールは額に手を当ててストックしておいたブリザドを放った。
―――キシャァァッ!!
ヘッジヴァイパーがもがき苦しんでいる内にゼルとサイファーが一気に畳み掛ける。
魔物が消えると、3人は戦闘態勢を解いてそのまま電波塔へ走り出した。
† † †
「結構登ったなぁー。」
ゼルが首を鳴らしながらそう呟いた。
「おい、隠れろ。」
先程から崖下を眺めていたサイファーが急に身を屈めた。
どうやら何かを見つけた様である。
不思議に思った2人は、屈んだ態勢のままサイファーへと近づく。
入口らしき所の前に2人の兵士が見張りとして、扉の両サイドに立っていた。
そこへ電波塔の中から1人の兵士が姿を現した。
「発電装置動作確認完了!ブースター異常なし!!」
「ケーブル断線箇所確認!これより交換作業に入ります!」
「了解。」
そう言い終わると、3人のガルバディア兵は電波塔の中へと姿を消した。
「修理・・か?」
「こんなボロっちぃ所を?」
スコールの言葉にゼルは信じられないといった表情をした。
「ま、俺達には関係無ぇか。」
サイファーはそう言いながら、スコールの方を向いて笑う。
「お前、本物の戦場は初めてなんだろ?怖いか?」
その余裕な表情はまるでこの状況を楽しんでいるようだった。
――怖い・・?確かに、人を殺すのは怖い・・。だが、必要なら・・殺すのかもしれないな。
「分からない・・。でも、考えると怖くなりそうだ。」
――今まで何度も訓練を受けてきた。
魔物だけじゃなく人間とだってバトルしてきた。
しかし、それはあくまで”訓練”
今行われてるのは、正真正銘の戦争・・人間同士の殺し合い。
(俺は・・何の為に人を殺す?)
考えれば考えるほど、答えなど無い沼地へと足を取られていく。
(だったらいっその事、考えなきゃいいんだ。俺はただ任務をこなす・・それだけ。)
スコールが電波塔を眺めていると、サイファーはふいに口を開く。
「俺は戦闘が大好きだ!怖い事なんてねぇよ。
戦闘が終わっても生きているって事は確実に”夢”の実現に近づいているって証拠だ!」
その表情はスコールとは正反対で自信に満ちている。
「は!?」
スコールは予想外のサイファーの夢発言に、柄にも無く声を上げた。
「そうだ。お前だってあるだろ?」
笑いながらそう問うてきた。その笑顔はいつもの厭味が感じられない。
「悪いな、そういう話ならパスだ。」
そんなサイファーがスコールは何故か直視できなかった。
それは、意外に乙女な一面を持っているからか、それとも純粋に笑顔が眩しいのか。
つまらねぇ奴とサイファーが後ろで文句を言っていたが、今はそんな事気にしてられなかった。
「何だ?俺にも聞かせろよ!」
先程まで会話に入って来なかったゼル。
しかし、そんなゼルを鼻で笑いって「その他大勢は引っ込んでろ。」とあしらった。
その言葉が気に食わなかったゼルが拳を繰りだす。
サイファーは相手にもせず「ハエでも飛んでんのか?」と更にバカにする。
スコールはそんなやり取りに呆れるばかりであった。
(そう言えば・・・の夢、聞いたこと無いな。今度聞いてみるか。)
「みぃーーーつけた!」
「「「!!」」」
そんな時、戦場に似つかわしくない明るい声が響き渡った――
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