time limit

-------------------------------------------------------------------------------- 「みぃーーーつけた!」 スコール達が声のした方を見る。 崖の上からこちらを見下ろす少女にスコールは見覚えがあった。 (あの時の・・・) (名前は・・・セルフィ?) スコールあの時の事を思い出していると・・・ 「キャッ!」 「うをっ!?」 セルフィとゼルが急に声を上げた。 スコールが顔を上げると、何故か先程まで崖に居たセルフィが目の前に居た。 どうやら、崖から転落してきたらしくぶつけた尻を摩っていた。 ゼルが心配そうに声を掛けていたが、本人は何ともないらしく何事も無かったかのように喋りだした。 「A班の伝令で来たんだけど・・・班長はサイファーだよね?」 きょろきょろと辺りを見渡してみるがサイファーの姿は無い。 「ん?サイファーなら其処に・・。」 ゼルがサイファーの居るであろう場所を指差そうとしたが・・・・ 「居ないな。」 スコールが続ける。 「おいおい・・」 一同が途方に暮れていると、辺りに先程よりも何オクターブが低い声が響き渡った。 「何時か聞かせてやるよ!俺のロ〜〜マンティックな夢をな!」 声がした方を見てみれば、サイファーが電波塔の入口の前に立っていた。 ((何だ、ロ〜〜マンティックて)) サイファーのロマンティック発言に突っ込まずには入れない。 スコールとゼルは「本当にコイツが班長でいいのか」、と一抹の不安が浮かんだ。 セルフィはと言うと、「はんちょ〜!待ってぇ!」と言いながら崖を飛び降りていた。 今度は失敗することなく無事に着地したようだ。 「マジかよ・・。」 ゼルは崖の下を見つめながら呟く。 「何してんのー?行こうよ!」 こちらを見上げながらセルフィが勢いよく手を振ってくる。 「まさかここから飛び降りる気はない・・よな?」 ゼルが不安そうにスコールを見つめる。 「・・・・・当り前だ。」 (・・飛び降りようとしてたなコイツ。) 俺様主義の班長に、何処か抜けてる班員、ゼルも引く程のムチャする伝令・・・ (俺が一番マトモかも・・) ゼルはぼんやりとそう思った。 † † † サイファーを追って三人は屋上に来ていた。 リフトを使って上がって来た先に現れたのは、閉じられた大きなアンテナだ。 「はんちょーいないねぇ。」 セルフィが辺りを見渡しながらそう呟く。 ――その途端に床が大きく揺れた。 「キャッ」 「ッ!」 「をっ!」 三人はそれぞれ近くにある物にしがみ付く。 揺れが収まったかと思えば屋上一帯が一気に明るく照らされた。 見上げてみると、先程まで閉じられていたアンテナが全開されていた。 そして、間を開けずにアンテナから溜まっていた電気が一気に放出された。 想像外の出来事にスコール達は開いた口が塞がらない。 「貴様らこんな所まで来て何をしている!」 いきなりの怒鳴り声にスコール達はハッとして武器を構える。 先程まで何かの操作をしていた男がこちらに向かって叫んでいる。 赤い服を着ているところを見ると、おそらく上級の兵であろう。 敵意剥き出しの表情でこちらを睨みつけている。 だが男は何かに気付いた様子で先刻までの強気の表情は一変し、焦りの表情となった。 「下に居た兵はどうした!?・・ウェッジ!!ガキ共を早く片付けろ!」 が、ウェッジと呼ばれた男は一向に姿を現さない。 「ウ、ウェッジ・・?」 男は焦って辺りを見渡す・・・ようやく部下が不在と知ったらしい。 「わ、私はもう電波塔には用がないから・・・か、帰るぞ!退けっ退け!」 そして分の悪いと気付いた様で、全身を恐怖で震わせながらも真横に移動する。 (何だ・・?) スコールは男の腕の中にある物に気が付いた。 大切そうに抱えているようだったが、その努力も空しくソレはガキィィンと金属音を立てながら吹き飛ばされた。 ――どうやらいつの間にか男の前に立っているサイファーの仕業の様だ。 「残念だったな。」 口の端を吊り上げているサイファーとは対照的に男の顔は見る見るうちに青く染まっていく。 「あ、あぁ・・・あぁぁ!!なんて事するんだー!!」 「黙れ!」 サイファーが男にガンブレードを振りかざした。 男は剣を避けて、そのまま戦闘体制を取る。 「ッチ!」 「覚悟しろ!ガキ共め!」 男が罵声を上げた直後・・「ビッグス少佐殿ーっ」 張り詰めた空気に少し間の抜けた声が響いた。 見てみると、1人の下級兵らしい男が立っていた。 「ウェッジ!」 「アンテナの調査完了されたのですか?・・ってこんな所に敵が!」 「こらウェッジ!何処へ行っていた!お前。今月の給料無し!」 「ひぇぇ、来なければ良かった・・・。」 そう言いながらも、ビッグスとウェッジは武器を構える。 其れを見たスコール達もを解きかけた体制を再び戻した。 そして2人に攻撃を仕掛けようとした瞬間―― 「・・・!」 背後で何かの気配を察知した。 振り返ってみれば其処に居たのは、大きな羽と蜂の様な鋭い針が特徴的なエルヴィオレだった。 「なんだコイツは!?」 驚く一同を尻目にエルヴィオレはその大きな羽を一振りした。 すると突風が起こり、そのままビッグスとウェッジを吹き飛ばしてしまった。 「な、何だ?コイツ・・。」 「さぁな、取り敢えず倒すぞ。」 スコール達は標的をエルヴィオレに変更した。 † † † 一方、達は・・・ 「本当に此処であってるの?全然街っぽくないんだけど・・。」 辺りを見渡しながらが言った。 SeeDの説明によれば、自分達が言い渡された担当地区は市街地だったはず。 だが、達が居る場所は市街とは掛け離れた雑木林だ。 「・・・迷っちゃったみたいだね。」 「だな。」 「嘘でしょぉ・・。」 の叫びが辺りに木霊した。 迷子の3人は周りに何か手掛かりがないか調べる事にした。 とリヒトがそれぞれ別の場所に散策に行き、シンを留守番をするという役割分担だ。 「どうだ?何か見つかったか?」 留守番役を請け負ったシンが散策から帰って来たリヒトに尋ねる。 「いいや、周りは何処見渡しても木ばっかりだったよ。は?」 「まだ帰って来てねぇ。・・・迷子だったりしてな。」 「かもしれないね。」 そう言って2人は笑い合った。 「シンと一緒にしないでよね。」 いつの間にやら帰って来たが言った。 「うおっ!?ビビった!声掛けろよな〜。」 「今来たばかりなの。て言うか、リヒトは気付いてたみたいだけど。」 「マジかよ、教えろよな。」 「ごめんね。それで、の方は何か見つかった?」 「あ、そうだった!舗装された道があったよ。」 ちょっと遠いけどね、とが付け足した。 「お!じゃあ、行ってみようぜ!」 目を輝かせるシンに2人も頷いた。 † † † 「だぁあ!?全然当たらねぇ!!」 先程からエルヴィオレに攻撃を当てられないゼルが痺れを切らした。 スコールも口には出さないが中々相手にダメージを与えられず苛立ちを隠せない。 一行は飛行タイプのエルヴィオレに攻撃を当てられず苦戦を強いられた。 「・・・・。」 (このままだとこっちの体力がもたない。早くこの状況を打破しないとな。・・何か持ってないのか。) スコールは目を閉じて意識を集中する。 「・・!!」 (コイツG.F.を・・!) スコールがドローしてみると案の定、エルヴィオレからドロー出来た。 予想と違ったのはドローしたのが魔法ではなくG.F.だった、と言う事だ。 「大丈夫ー?」 ドロー直後、微動だにしないスコールにセルフィが声を掛けた。 「あぁ・・どうやらG.F.を持ってるらしい。」 「ホント!?」 (・・・コイツ使ってみるか。) スコールは額に手を当てて意識を集中させる。 サイファー達はスコールがG.Fを発動させた事に気が付き、各々後退する。 其れと同時に足元に水が広がっていきやがて海となる。 そして現れた岩場の上に美しい女性――セイレーンの姿が。 彼女は持っていたハープで美しい音色を奏で出した。 すると、音波がエルヴィオレを襲う。 その衝撃の強さにスコールはよろけた。 音波を諸に受けたエルヴィオレはスコールの比ではなく、ゆっくりと降下して来る。 スコールはそのチャンスを見逃すことなく、弱ったエルヴィオレに斬りかかった。 そして其の勢いを使って再び斬り込む。 それが止めの一撃となって、エルヴィオレは力無く横たわりやがて消滅した。 エルヴィオレが消滅するのを見守った後、セルフィはサイファーの元へと駆け寄った。 「B班班長?」 サイファーは質問に答えずに眉間を寄せていた。 スコールに止めを刺されたのが気に食わないらしい。 「B班班長!」 今度はさっきよりも強めの口調で声を掛ける。 するとようやく気付いた様で、セルフィの方を向いた。 セルフィは敬礼をしながら「伝令です。」と告げる。 「SeeD及び、SeeD候補生は19:00に撤収。海岸に集合せよ!」 「撤収!?まだ敵は居るんだろ!?」 サイファーが不服そうに声を荒げる。 「あたしは唯の伝令だからそーんなこと言われたって。」 セルフィの言葉は尤もでサイファーも黙るしかなかった。 「撤収は最重要命令だ。俺は船に乗り遅れたくは無い」 「俺もだ!」 「・・・何時集合だって?」 サイファーが再び問うた。 セルフィは「だからー!」と言いつつもまた敬礼をして伝令を繰り返した。 「SeeD及び、SeeD候補生は19:00に撤収。海岸に集合せよ!」 「19:00・・・。あと30分しかない!30分で海岸まで走れ!」 時計で確認したサイファーは焦った様子でそう告げてそのまま1人だけリフトで下りて行った。 残された3人も文句を言いながら。戻ってきたリフトに乗って降下していった。 † † † 「やっと街っぽい所に来たな!」 シンが、んーっと腕を上に伸ばしながら言った。 「だねぇ!」 も嬉しそうに同意する。 そんな中リヒトだけが深刻そうな表情を浮かべる。 「リヒト?」 が心配そうに声を掛ける。 「ん?どうした?」 シンもの声に反応してリヒトを見るが、リヒトは黙ったままだ。 そんなリヒトに2人は顔を見合わせた。 不意にリヒトが顔を上げて言った。 「・・・俺達さ。」 とシンは黙って頷いて次の言葉を待つ。 「ずっと迷子になっててさ、やっと目的地に付けた訳でしょ?」 ポツリ、ポツリとリヒトが言葉を紡ぐ。 2人は聞き逃さないように耳を傾ける。 「それでさ・・考えてみると、全然敵倒してないんだよね。」 「「あ。」」 リヒトの言いたい事を理解した2人は思わず声を漏らす。 「・・・つまり、試験ヤバイって事だよね?」 の言葉にリヒトがゆっくり頷いた。 「「「・・・・・。」」」 三人の間に沈黙が流れた。 「で、でもさ!まだ時間あるし、今からめっちゃ倒せば大丈夫だろ!」 シンが盛り上げるように明るく言った。 「だ、だよね!まだ時間あるし、このメンバーなら大丈夫だよね!」 「・・・そうだよね。俺達結構いいコンビネーションだよ!」 とリヒトもそれに便乗する。 お互いに鼓舞し合った後、 「よっしゃ!んじゃあ、今からどんどん倒してくぜー!」 シンが首を鳴らしながら言った。 「あれ?誰か来る・・。」 「お!早速ガルバディアの野郎か?」 「んー・・違うみたいだね。」 リヒトが目を凝らしながら答えた。 だんだん近づいて来る人影――よく見るとそれは自分達と同じSeeD候補生のようだ。 「候補生か?ここは俺達の担当区域だよな?なんでまた・・」 「何かあったのかも。」 3人の心に緊張が広がる。 † † † 「大丈夫?」 が息を切らした候補生に声を掛ける。 「うん、ありがとう・・。」 候補生は暫く肩で息をした後、一度大きく呼吸をして3人を見渡した。 そして、敬礼と共に「伝令です!」と言った。 「SeeD候補生及び、SeeDは19:00に撤収。海岸に集合せよ!」 「・・え?」 3人とも唖然とした様子で伝令を見つめた。 「19:00って・・・。」 「後30分もねぇじゃん!」 「何でもっと早くに知らせないんだ!」と続けるシンに伝令は 「この辺りに配置されたとは知らされてたんだけど・・・中々見つからなくて。」 (見つかるはず無いよねぇ、いなかったんだから。) は心の中でそう呟いた。 「じゃ、僕はもう戻るので!」 そう言って、3人が止める間もなく伝令は足早に去って行った。 「あーぁ。置いてかれちゃったねぇ。」 「呑気なこと言ってないで私達も行くよ!」 「あ!でも、任務はどーすんだよ!?まだ1人も倒してないぞ!」 「大丈夫!私、普段から優等生だから!」 「じゃあ、俺も大丈夫だね。」 「あーじゃあ俺は無理か・・・ってそう言う問題じゃ無くね!?」 そんな事を言いながら、3人も伝令に続いて海岸へと向かうのであった。