aragna
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達一行は揚陸艇の待つ海岸に辿り着いた。
乱れた息を整えながら時間を確認すると、時計の青白い光が"PM6:45"と表示している。
「間に合った・・・。」
安堵の溜め息を吐いてその場に座り込んだ。
そんなの元にキスティスがやって来た。
彼女は「お疲れ様、」と慰労の言葉と共に優しげな笑みを浮かべた。
そんなキスティスを見ては改めて自分達が間に合った事を実感する。
「・・俺達の船は?」
シンが海を見渡しながら言った。
「其の事なんだけど、あなた達は船艇の調子が悪くなって他の船艇と先に戻ったの。
だから急遽、私達と戻る事になったのよ。」
「マジかよ・・・んで、先生のトコの班は帰って来たのか?」
「えぇ、1人だけね。」
キスティスは眉を顰て船艇を見ながら言った。
「え・・?1人だけって・・まさか。」
もまた船艇を見つめる。
キスティスの受け持った班―――即ちスコールのいる班でそんな俺様的行動をするのは唯一人。
「・・サイファーですか?」
の言葉にキスティスは溜め息を吐くだけだった。
そんな彼女に達はただただ同情するばかりであった。
† † †
「いい加減機嫌直せよ。」
「・・・・。」
サイファーは横で不貞腐れているに声を掛ける。
しかし、反応は先程から変わることなく無反応。
「仕方ねぇだろ?俺だって遅刻したくなかったんでね。」
「だからって、置いてくことないじゃない。」
そう呟いてまた口を噤む。
「ま、その内戻ってくるだろ。」
はサイファーを一瞥すると、そのまま席を立った。
「おい、」と声を掛けるサイファーに「外見てくる。もう戻ってくる頃だから。」そう言い残して出て行った。
「もう戻ってくる頃だから。」
誰が・・・なんて聞かなくても分かる。
アイツの中にいるのはいつも一人だけだから。
「そんなにスコールが大事かよ・・・。」
サイファーの呟きは誰に伝わることなく静寂の中に溶けていった。
† † †
「お兄ちゃん達戻ってきました?」
船の外にいたキスティスに声を掛ける。
「うーん・・まだ見えないわね。」
「そうですか・・・あっ!」
が何かを見つけたようだ。
「やっと戻って来たのね・・・・スコールは?」
2人の視線の先にはセルフィとゼルがこちらに向かって走って来ている。
その必死な表情とスコールの姿が見えない事から、何か良からぬ事が起こったのだと悟る。
「お兄ちゃん・・っ。」
は居てもたっても居られなくなり、武器を片手に戦場に戻ろうとする。
次の瞬間、
ガッシャアアアアンッ!!
大きな音と砂埃が起こった。
「ッ!」
はたじろぎながらも目を凝らして音源の方を見る。
其処には蜘蛛を連想させる巨大な機械と追われているスコールの姿が。
スコールの背に照準を合わせる機械。
其れに気付いたは辿り着いたゼルとセルフィに声を掛ける。
「ッ・・なんなのアレ!」
「わかんねぇよ!急に出て来て俺らを追って来たんだッ。お前も早く船に乗れ!」
ゼルはそのまま船に乗り込んだ。
「追いかけて来たって・・」
「X-AT092、通称"ブラック・ウィンドウ"・・ガルバディアの兵器だよ。毒への耐性が強くて、雷に弱い。」
船を降りたリヒトが冷静に説明してくれる。
「何で・・」
知っているの?と続けようとするを遮り、リヒトはX-ATM092に向かってサンダーを放った。
サンダーを諸に喰らったX-ATM092は動きを怯ませる。
「さぁ、俺達も船に戻ろう。」
リヒトはの腕を掴んで、半強制的に船へと戻った。
そして、間を開けずにスコールが飛び込んできて、そのままハッチが閉じられた。
X-ATM092が行かせまいと銃口をこちらに向け発砲しようとしたその時、X-ATM092とは別の銃撃音が響き渡る。
キスティスが機関銃でX-ATM092を射撃したのだ。
何発もの球を喰らったX-ATM092はそのまま地に伏せる。
それを確認したキスティスは「出して!」と叫んだ。
船艇は海岸を離れて、海へと移動する。
背後から銃撃に耐え切れなくなったX-ATM092が大破する音が聞こえた。
† † †
「お兄ちゃんッ!」
床に倒れたままのスコールに駆け寄る。
スコールは何とか痛む体を起こし、その場に座り込んだ。
はスコールの隣に膝を付きケアルを唱えた。
淡い光がスコールの傷口を覆い、傷を癒していく。
身体から痛みが引き心地良さが広がってゆく。
大分身体が楽になったスコールは顔を見上げた。
「・・。」
其処には涙で目を滲ませているの顔が。
スコールは胸を締め付けられた気がした。
、もう一度その名を呼ぶと、「おかえり」と囁かれた。
スコールは少しだけ笑みを見せて「ただいま」とだけ返しそのままの腕の中へと倒れ込んだ。
「おいっ、大丈夫か?」ゼルが心配そうな声を上げる。
「大丈夫、寝ちゃっただけだから。」はそう声を掛けた。
「んだよ、驚かせんなよな。」
そう言いながら、ゼルはこちら側にやってくる。
が不思議そうな表情を浮かべているのに気付くと、「ここじゃ寝心地悪いだろ?」と言って、スコールを長椅子へと運んで行く。
もゼルの背中に「そうだね。」と笑うと、彼女もまたスコールの隣に腰掛けた。
(おやすみ、スコール)
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