azzardo
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「あーぁ、何やってるんだろ私・・。」
勢いでパーティ会場を抜け出したあかりは、行くあてもなくフラフラと廊下を歩いていた。
廊下には全くと言っていいほど人の気配が感じられなかった。
(うぅっ・・・やっぱ会場で大人しくしてればよかったかも。)
そう思いながらも、会場とは正反対の方向に足を進め続けた。
† † †
その頃スコールはと言うと、少女から解放されあかりを探している最中であった。
少女は知り合いを発見したらしくスコールに一声掛けて、輪からスコールを置いて出て行ってしまった。
スコールは一体なんだったんだと思いながら、自分も此処にいる理由も無いのであかりの元へと戻ろうとした。
が、其処にあかりの姿は無かった。
先程まで此処で自分達の様子を見ていたのだが、飽きてしまったのかそれとも誰かに呼ばれたのか、
どちらにしろ彼女の姿は何処にも見当たらなかった。
スコールはどうしたものかと悩んだ後、この後の予定も特に無いのであかりを探す事にしたのだった。
† † †
あかりは特に意識した訳ではないが、校庭に来ていた。
校庭は夜風が通って少しひんやりしていた。
(SeeDの初任務で風邪引いたらシャレになんないよね・・。)
部屋に戻ろうとしたが、見覚えのある人影を見つけて思い留まった。
「サイファー・・?」
木の陰で見えにくくなってはいたが、月明かりに照らされたサイファーの金髪が彼の存在を教えてくれた。
「あぁ・・お前か。」
声を掛けられたサイファーにいつもの勢いを感じられなかった。
(そっか、サイファーは試験に・・。)
今までSeeDになった自分で頭がいっぱいになっていた。
当然の事ではあるが、試験に臨んだもの全員が合格するわけではないのだ。
「サイファー・・、」
「何だよ、笑いに来たのか?あんだけ大口叩いといて試験に落ちた無様な俺を。」
自嘲的な笑みを浮かべるサイファー。
相当試験結果が響いているようだ。
「そう言うわけじゃ、」
あかりはなるべくサイファーを傷付けないよう慎重に返事を返した。
が、そんな努力も虚しくサイファーは声を荒げた。
「はっ、どうだかな!お前も内心思ってんだろ俺の事、万年SeeD候補生の落ちこぼれだとよ!!」
「っそんな事・・思ってない!」
サイファーは此方を向かない。あかりは構わずに続ける。
「思ってない・・・・・そう思ってるのはサイファー自身でしょ!!」
「何・・?」
サイファーがようやく此方を向いた。
あかりの言葉が癇に障ったのか、鋭い目つきで此方を睨んでいる。
「俺が何時自分を落ちこぼれだと思ったんだよ!?俺は常に・・」
「今思ってるでしょ!?サイファーは気付いてない・・ううん、気付きたくないんだよ。」
「サイファーは怖がってるんだよ。サイファーは誰よりも責任感が強いから・・・失敗するのが嫌なんだよ。」
「・・・・・。」
二人の間に沈黙が流れる。
パーティ会場から微かに聴こえる音楽だけが辺りに響き渡っていた。
「・・・・ねぇサイファー、失敗したって誰もいなくならないよ?」
「ッ!?」
「少なくとも私はサイファーから離れない。」
「あ、風神と雷神もかな。二人ともサイファーの事大好きだもんね。」あかりは笑いながら付け足した。
「・・・気持ち悪りぃこと言ってんじゃねえよ。」
そう悪態を吐きながらも、サイファーは笑っていた。
「・・・・あかり。」
「ん?」
「ありがとな。」
「どういたしまして!」
あかりの満面の笑みにサイファーも笑い返す。
「本当ならお礼にパフェとか奢って貰ってもいいとこだけど・・・・ん?」
「・・どうした?」
サイファーはあかりの視線の先を見つめた。
其処には何処かで見たことがある様な無いような二人組の男がいた。
「アイツら・・・実施試験の時の。」
サイファーが呟いた。
確かあかりと同じ班の奴だった気がする。試験で見かけた時から、いけ好かない野郎だと思っていた。
特にあの女みたいな面したヤツ。
「おい、」
「どうしたの?サイファーすっごい顔してるけど。」
「ほっとけ・・・それよりお前あの二人と親しいのかよ?」
「あの二人・・?あぁ、リヒトとシンの事?どうだろ、この前会ったばかりだから・・・でも、いい人達だよ。」
「・・そうか。お前、あいつ等にあんま気を許すなよ。
特に・・リヒトだったか、今後アイツと二人で会うな。」
「え?それってどういう、」
あかりの言葉を聞き終わる前にサイファーは「じゃあな。」と言ってその場を後にした。
「???」
あかりは状況が呑み込めず、一人立ち尽くしていた。
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