Hre secret
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「ただいま。」
お袋も親父も留守にしてるこの時間。
返事が無いことも承知だが、一応声をかける。
鞄を置いて靴を脱いでると、向こうから足音が聞えた。
「お袋?」
トタトタと廊下を蹴る音。
お袋かと思ったが、こんな可愛らしい足音じゃない。
もちろん、親父でもない。
「泥棒か・・?」
まさかと思いながらも、構える。
足音がだんだん近づいてくる・・・。
それに比例するかの様に、テンポを上げる心臓。
――来るっ!
一気に高まる緊張感。
目の前に現れた標的に一発ブチ咬ます。
「(よし、当たった!)」
倒れた標的、顔を確認すると、そこにいたのは・・・。
「・・?」
頭がショートした。
――え、俺今・・殴った? ・・を?
「おかえりなさいッ!」
フリーズ状態の俺を戻してくれたのは、意外にもの声だった。
「え、た、ただいま・・って、お前大丈夫なのか!?」
自然に返事したが、有り得ないだろッ!?
今、コイツ俺の殴り喰らって、倒れたんだぞ?
なのに、何でこんなに元気なんだよ!
「拓磨様ー?」
不思議そうに見上げるには、傷一つ見当らない。
「大丈夫なのか?」
「?うん!」
「そ、そうか・・。」
◆ ◆ ◆
玄関での一件も落ち着き、とりあえずと俺は自室に行くことにした。
部屋に着くなり、は俺のベットの上にダイブした。
「にーッ!」
「あんまり、暴れるなよ。」
ベットの上ではしゃぐを尻目に、俺は今までの出来事を整理することにした。
「(まず、と出会ったのは屋上だったな。それで、何故かコイツは俺の事を知ってた。
どこかであったのか・・?覚えがないが。で、次に珠紀と屋上に行ったらいつの間にか消えてて、
家に帰ったら何故かいる・・と。しかも、俺に殴られても平気・・。)」
まったく得体の知れない。
だが、不思議と悪い奴ではない気がする。
「(ホント何者なんだ・・。明日にでも祐一先輩に相談してみるか。)」
考えても埒が明かないし、ここまでくると何が起こっても冷静でいられる。
それよりも、
「(お袋達にコイツの事をどうやって説明するかだな。)」
◆ ◆ ◆
あの後、散々悩んだが結局いい方法が浮かばず、お袋が帰って来た。
「あら、拓磨いたの?」
「あぁ・・。」
「?」
言いたいことが言えないもどかしさが、俺の行動を挙動不審にさせる。
そんな俺をお袋は不審に思っているようだ。
「(ここで黙ってても、無駄だろうが。勇気を出せ!俺!)」
後々考えてみれば、恥ずかしいセリフで意を固める。
「あのよ・・」
「おかえりなさいっ!」
「!?」
背後からの声がした。
振り返ると、いつの間にかが台所にいるではないか。
『・・・・。』
異様な雰囲気が台所に流れる。
もちろん、お袋には何も説明もしてない。
そんな状況でを見たら、どう思うだろうか。
「あーー、実h「あら、ちゃん。ただいま。」
「は?」
「1人でお留守番できた?」
「うん!」
「偉いわねぇ。」
呆然と立ち尽くす俺の前で、2人は親子のような会話を繰り広げる。
「あ、あのー、お母様?」
「あら、拓磨まだいたの?」
お袋のブラック発言はこの際無視しとこう。
「何でコイツの事知ってるんですか?」
「何でって・・。あぁ、あんたにはまだ教えなかったわ。」
「は?何をだよ。」
「この子、暫くうちで預かる事になったの。」
「・・・・はい?」
年がらも無くに向かって、ねー、と首を傾げながら同意を求める。
も便乗して首を傾げながら返事をする。
「(ちくしょう、可愛いんだよ!)」
まぁ、お袋もを家に置くことに賛成みたいだし、別にいいか・・・。
「否、よくねぇよ!」
「にゃっ!?」
「っ急に大声上げないの!ちゃんが吃驚するでしょうが!」
「いや、よくねぇ。まだ、普通の子供とかだったら分かるけどよ・・。
は猫耳だぞ?尻尾のオプション付きの!全然、普通じゃねぇよ!!」
白い目で見つめるお袋に力説する。
が、お袋はさも馬鹿にしたような表情で溜め息を吐く。
「何?そんな事気にしてたの?拓磨・・・あなた、それは人種差別よ?」
「いや、違うだろ。」
爆弾発言に1秒を空けずに否定する。
「じゃあ、他に何があるって言うの!?」
「逆ギレかよ。そりゃぁ例えば、妖怪だったり・・!?」
バッッと、の方を振り向く。
「に?」
不思議そうに見上げる。
改めて、考えてみると不自然な点が幾つも浮かぶ。
猫耳や尻尾がある事、それに俺のケタ外れの怪力を喰らってもビクともしない事。
いくら雑な性格でも常識のあるお袋がを目の前にして何一つ疑問を持たない事。
「(これは、卓さんにも相談するべきだな)」
あの時・・・・鬼斬丸を封印した時の様な、
強い不安とまさか・・などと淡い期待が混ぜ合う混色の感情が俺の心を支配した。
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