仔猫と子狐―後篇―

-------------------------------------------------------------------------------- 「ふぅ、ごちそうさまでした。」 珠紀が手を合わせて言った。 遅めの昼食は終わり、皆それぞれが好きな事をしている。 真弘と拓磨は雑誌を読み、祐一は考え事・・・と言うより昼寝をしている。 珠紀と慎司は会話に勤しむ。 は二人の会話に聞いていたが、飽きてきたようでキョロキョロと何かないかと探し出した。 ふと、珠紀の膝の上に何か白いものを見つけた。 丸くて、ふわふわしているソレにの興味が注がれる。 すると、白いソレもの視線に気付いた様で互いに見つめ合う体制になった。 珠紀達は会話に夢中になっていて、こちらには気付いていない。 暫くの間見つめ合っていたが、ふとが珠紀の膝の方に手を伸ばす。 ソレはピクリと身体を揺らしたかと思うと、そのまま身を硬直させる。 は気にも留めずにそのまま白いソレを手に取って見た。 その瞬間「に!」ソレがいきなり声を上げた。 「に!」 急に声を上げるソレにつられても声を漏らす。 「え?」 その声に気付いた様で珠紀が膝を見てみると、 さっきまでいたはずのオサキ狐ことおーちゃんがいつの間にかの掌に移動していた。 は白いソレ基、おーちゃんをまじまじと見つめている。 珠紀はそれを見て、クスリと笑みを零した。 「コレなぁに?」が珠紀に尋ねる。 「オサキ狐だよ。おーちゃんって言うの。」おーちゃんを撫でながら珠紀が答えた。 「おーちゃん?」 「そうだよ、初めて見る?」 「うん。」 「そっか、こうやって撫でてあげると喜ぶよ。」 「こう?」 珠紀の真似をしてもオサキ狐の頭を優しく撫でる。 すると、オサキ狐は気持ちよさそうに目を細める。 「寝ちゃったの。」 「ふふ、ちゃんの手が気持ちよかったんだよ。」 「にー。」 膝の上にオサキ狐を置いて優しく撫でる猫耳の少女・・・「最高だわ。」 ――ピロリロリ〜ン☆ 携帯のカメラ独特の間抜けた音が辺りに響いた。 「(しまった、無意識のうちに・・。)」 「珠紀・・。」 いつの間にか背後に立っていた祐一が肩に手を置いた。 「あ、先輩これは・・。」 後悔先に立たず――・・言い訳をしようとしたその矢先に祐一が口を開いた。 「赤外線で頼む。」 「へ?」 メール添付だと金が掛るからな、と呟く祐一の手には携帯が。 以前までは携帯が繋がらなかったこの村だが鬼斬丸の一件後、芦屋の配慮で電波が届くようにしてもらった。 そのお陰で今まで携帯を所持する習慣が無かったこの村でも、携帯を持ち歩く者が多くなった。 祐一もその一人であったようだ。 「先輩・・・携帯持ってたんですね。」 普段、携帯を使っている姿を見たことが無かった。 「あぁ、昨日買ったばかりだからな。」 「そうなんですか。」 ――その割にはめっちゃ携帯駆使してません? 祐一の事だから携帯=連絡手段という認識しかないと思っていた。 「(まさかの赤外線・・。)」 あまりの順応っぷりに驚愕しつつも、先程から祐一が携帯の黒い部分(赤外線の受信部)をこちらに向け続けているので 珠紀は何も言わずに画像を送ることにした。