お買い物しましょう。
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「・・どうすればいいんだよ。」
「ままー。」
「いや、その前に何でこんな状況になったんだよ。」
「まーまー。」
「確か、いきなり変な女にバカでけぇ卵渡されて・・」
「まーまぁ」
「んで、コイツが「マーマッ」ってうるせぇな!!」
さっきから横で騒ぐ。
怒鳴られた本人は怖がりもせず、悪怯れた様子も無い。
「にゅ?」
ただ見上げて首を傾げる。
「チッ」
そんなに舌打ちしつつ、サイファーはとりあえず昼食にすることにした。
☆・。★・。☆・。★・。
昼食を済ませた後、サイファーはの生活用品を揃えるべくデパートに訪れていた。
「勝手に離れんなよ?」
「ん!」
返事を確認すると、サイファーは目の前にそびえ立つ建物に入った。
デパートは想像以上に混んでいた。
「いいか、もし俺を見失ったらあそこで俺が来るのを待ってろよ。」
がサイファーの視線の先を見る。
そこにはベンチが設置されおり、ちょっとした広場になっている。
「・・・・。」
「どうした?」
返事をしないに声を掛けるが、一向に返事をする気配はない。
ただ何かを見つめている。
不審に思ったサイファーがの目線を追う。
「・・・大人しくしてたら買ってやる。」
ベンチの前で売られているアイスクリームを見ながらサイファーが言う。
「行くぞ。」
そう言ってサイファーは近くに積まれていたカゴを掴んで奥へと進んでいく。
「ん。」
も名残惜しそうにしながらも、彼の後に続いた。
☆・。★・。☆・。★・。
サイファーは早く終わらせたい一心で、足早に子供服売り場を目指す。
子供服売り場には大量のレースが施されたスカートや色鮮やかな服で埋め尽くされていた。
こんな服着たがる奴いるのかよ、と内心思いながら手当たり次第に服をカゴに入れてゆく。
「適当すぎたな・・。」
カゴに溢れんばかりの服を見てサイファーは後悔した。
舌打ちをしつつ洋服を手当たり次第に戻していく。
――どうせならアイツに選ばさせるか・・
「おい、この中から好きな服・・」
選べよ、と続けるつもりだったが振り返った先にはの姿が見当たらなかった。
「・・・めんどくせぇな。」
探しに行こうとしていた足をふと止める。
―――このまま置いてけばいいんじゃねぇか。
何で俺がここまでする必要がある?
見ず知らずのガキなんてほっときゃいい。
サイファーは持ってたカゴを足元に置いて、その場を後にした。
☆・。★・。☆・。★・。
――見つかる前に帰らねぇとな
そう思う心とは裏腹に、あたりを見渡しながら進むサイファーの足取りは遅い。
無意識の内にを探している自分に苛立っていると、どこからか聞き覚えのある声がした。
声の方を見てみると、ここの従業員らしい女性とが話しているようだ。
よく見ると女性は困ったようにの方を見つめ、は泣きそうな顔をして女性を睨んでいた。
「何やってんだよ。」
面倒事に巻き込まれる前に立ち去ろうとすると、サイファーの耳にの声が響いた。
「っままがっ・・ひっく、ここでまってろっていったもん!もうすぐっ・・・ままがっくるの!」
しゃくりを上げながらも、必死では抗議した。
「!」
サイファーは立ち止まった。
『大丈夫、もうすぐ迎えに来るよ』
『ほんと・・?』
『今日からここが貴方の家よ』
『ママは?』
『・・・ごめんなさい。でも、ここにはお友達もいるから』
『いらないよ!それよりもママやパパは?どうして迎えに来てくれないの!?』
『・・・・。』
「・・・・。」
サイファーは顔を顰めながらその場に立ち尽くした。
「お姉さんの所に来てくれた方がママも見つけやすいから・・ね?」
一緒に行こうと続ける女性には頑なに首を振った。
痺れを切らした女性は半ば強引にの手を掴む。
「おい。」
それと同時に声を掛けられた。
「きゃっ。」
女性は驚きのあまり掴んでいた手を離した。
見上げた先には金髪で強面の男の姿だった。
「まま!!」
はそう叫ぶとサイファーの腕の中にダイブした。
そんなの頭をそっと撫でながら再び女性を見て、
「コイツの母親だ。」
そう言い放って立ち去った。
「ったく、勝手に俺様から離れるなって言っただろーが。」
の一歩手前を歩くサイファーが言った。
「ごめんなさい・・。」
「・・・何処行ってたんだ?」
「・・。」
は目の前を横切った親子を指さす。
その子供の手にはアイスが握られていた。
サイファーはあぁと納得し、
「後で買ってやるよ。」
「違うの・・。」
「あ?違うのかよ・・じゃあ何だって・・・・あぁ」
サイファーは俯くに手を差し伸ばした。
「まま・・?」
「手ぇ繋ぐか?」
また迷子になったら面倒だしな、と続けるサイファーの顔は何処となく赤く染まっていた。
の表情は一気に明るくなった。
「うん!」
大きなサイファーの手にの小さな手が重ねられた。
その柔らかさに内心驚きつつもサイファーは壊れないように・・それでも離れないようにしっかり握った。
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