灰かぶり2―撮影後の2人―
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「やっと終わったぁ。」
安堵の溜め息を吐きながら椅子に座る。
足をぶらぶらさせながら俯いていると、気配を感じた。
顔を上げてみればそこには、さっきまで自分と芝居を演じていた恋人の淳が立っていた。
「クスクス、お疲れ様。」
ハイとペットボトルのお茶が目の前に差し出された。
「ありがと。」
「どういたしまして。」
そう言いながら隣に座ってくる淳。何か用があって来たという様子はなく、向こうもただ休憩しに来たという雰囲気だ。
そこで、さっきから気になっていたある物に手を伸ばした。
それは、この芝居の台本である。
パラパラとページを捲っていくと、観月に書かれた達筆かつ正確な文字で書かれていた。
本当にこれが男の文字だろうか・・・そんなことを思っていたら、ある事に気が付いた。
――なんで、観月はシンデレラと王子を結婚させなかったの?
確か原作ではシンデレラと結ばれるのは王子であった。
本来ならば、自分は王子役であった柳沢と結婚するという設定だった。
しかし、実際シンデレラの結婚相手は魔法使い役の淳だった。
芝居と言えど、淳以外の男と結ばれるという事に引け目があったので、良かったと言えば良かった。
だが、あの観月がそんな気を遣ったことができるだろうか。
「(絶対何かあるよ・・。)」
うーんっと唸っているを不思議に思ったのか、淳が訊ねてきた。
「どうしたの?」
「・・・。」
「・・?」
「・・・。」
「(クスクス、僕を無視する気・・?)」
あまりにも真剣に考えていて、淳の声が届かない。
そんなの耳元に淳は顔を近づけて、
「、構ってくれないと、僕のこと食べちゃうよ・・?」
辺りの温度が一気に下がった気がした。
「!?」
振り返ってみれば、そこには口元こそ笑みを浮かべているが、明らかに目が笑っていない淳がいた。
「(こ、怖ッッ!!!)」
あまりの迫力に思わず後ずさってしまった。本当に怖い・・・。
「クスクス、そんなに逃げなくてもいいのに・・。」
淳はこれ以上私が離れないようにする為に私の腕を掴んだ。
正直、ちょっと痛いんですけど・・。
「どうしたの?そんな怖い顔して。」
いやいや、あんたのが怖いからッ!!!・・・なんて口が裂けても言えない。
「いや、今回のストーリーが予想外のエンディングだったから・・。」
「・・・・あぁ、あれね。」
なんだ今の間は・・・?? 淳は何か知っているんじゃないの・・??
「ねぇ、淳もしかして「ううん、何も知らないよ。」・・はい。」
絶対何か知ってるぞッ!!!! でも、怖くて言えないッ!!
だって、ずっとこっち見てクスクス笑ってるんだよ!? 聞けるわけない・・。
「ねぇ、。」
「ん?」
「また、お芝居やろうね。」
「!?・・はい。」
また、誰か犠牲者が出るのか・・・そんな憂鬱と共に次はどんな物語かな?
なんて、楽しみにしている私がいる。
=End=
―あとがき―
ちょっと、短めです。
最初は、おまけとして書いていたんですが、おまけにしては長いかなぁ・・ということで、
短編として置くことにしました。
淳は絶対幸村達と同じ匂いがします(笑)
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